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ピアノ連弾のすばらしいコンサートに行ってきました。

Duo HIBIKI ~エコール・ド・パリとその音楽展①~
http://www.piano.or.jp/concert/news/2013/10/02_16695.html

曲を個別に論評すると長くなるので、メモ的に感じたことを書きます。

ミヨー、サティ、ラヴェルという三人の作曲家の小品をまとめて聴いたのです。
三者に共通するのは、聴衆の自動性を裏切ろうとする姿勢です。

メロディ、リズム、和音の音楽の3要素は、人を楽しませます。
音楽と人々の楽しみが相殺されて消えて行く、それを消費と呼ぶとしますと、聴衆が消費の快楽の中に眠りこもうとすると、それが切断されるのです。

サティに顕著なのですが、切断されたときに、人の心理の断面図が現れる。
そして、唐突に再開される。

中断されたものと、再開されたものは、すでにズレているのですが、人は意味を求めてなんとかそれをつなぎ合わせようとする。
そのように心が動く仕組みを利用したある種残酷な音楽かもしれません。

ラヴェルの『ラ・ヴァルス』は、『ザ・ワルツ』という意味だそうです。
ワルツといえば、舞曲だと考えます。しかし、これも踊ろうとすれば、どんな前衛舞踏家も何度も虚空においてけぼりにされるような奇怪な曲です。
では、なぜ『ザ・ワルツ』なのか。
踊る肉体は影に過ぎないと言っているようです。
影に投影される前のワルツの本質はこれだ、と言っているのかと感じました。

ある曲は1920年頃と言っていましたから、他も同時代だと思います。
そんなことを考えていると、僕の中にはある神秘主義者の名前がちらついてきました。

ゲオルギイ・イヴァノヴィチ・グルジェフ。

人間の機械性、自動性を最も手厳しく指摘し、それを破壊することで人間の可能性の全面的解放を目指した神秘思想家=実践家です。

戻って調べると、グルジェフは1866年生まれ。
ちょうど脂が乗り切った時期で、1922年にはフランス、フォンテーヌブロー=アヴォンに城館を買い自らの学院を開いています。

自分の好きな神秘主義に引きつけ過ぎてはいけませんが、グルジェフは当時はたいへんな有名人であったと思われます。
思想という大げさなものでなく、空気や気分はサティなどに十分に伝播していて不思議ではありません。
フランス人にかかると、どんな思想も才気の断片になってしまうようです。

グルジェフ自身、トーマス・ド・ハルトマンの助けを得て自身のムーブメント(舞踏-体操)のためのピアノ曲を作曲しています。

ふと演劇において異化効果ということを言い出したブレヒトを思い出しました。
異化効果とは、簡単にいうと芝居の快楽の消費を中断してしまう異物を劇中に挿入するということです。
調べてみると、彼の芝居の初演は1922年なのです。

心地よい陶酔やまどろみからは醒されて、だからといって全面的な覚醒はできない、という現代人の不幸の表現は、総じてこの年代から始まったのかもしれません。

 

 

 

ピアノを聴いてある精神史と出会う